「Sチューン」を作成する事になった経緯を教えて下さい
 
 

冨永 鹿児島でエギを自作し販売していた西田さんの存在は、結構以前より知っていました。
とあるエギング大会等でお見かけもしていましたが、お話しはした事が無かったんです。

それから西田さんがクロノのプロスタッフとなり、直接プロスペックを勧めて頂いたことがきっかけで、いろいろなお話をうかがうことになり、西田さんのエギングに対する厚さや奥深さに凄く惹かれて行きました。

 
 

冨永 そうなると西田さんが作成、販売していた「西田エギ」に自然と興味が向きますよね。どんなエギだったのかと・・

1個1個全て泳ぎのチェックを行ってから販売していたと聞いた時に「この人相当やばい人だな」と思いました、いい意味で(笑)

 
 

冨永 西田さんのハンドメイドである木製の「西田エギ」を、今現在の技術と西田さんの経験値、クロノさんと言うメーカーの知識とノウハウで製品化すれば、ファクトリーチューンでも凄い物ができるのでは?思って打診したのが今回のオリジナルエギのはじまりです。

 
 
西田さんは、その依頼を受けてどうでしたか?
 

西田 正直なところワクワクしましたね。以前僕が作っていたエギは木製で、ボディバランスにバラつきが有ったので、それこそ1個1個全てをスイミングテストして、個々にアクションチェックしてから販売していました。

しかし現在の技術で作成しているエギ・・例えばプロスペックなんかでも、個々に性能が安定しているじゃないですか。

木製で販売していた物を現在の技術で再現・・しかも単なる再現では無くて進化した形で再現する事が出来れば!
と言う思いで引き受けさせて頂きました。

 
 
 

冨永 鹿児島と言うエリアは、エギの発祥の地として知られていますが、その歴史は非常に奥深くて、長きに渡り受け継がれたノウハウが多数ありますからね。

子供の頃からエギに取りつかれ、こだわって自作していた西田さんは、僕の想像以上に知識も深いので、過去と現代の良いとこ取りが出来れば最高だなと。

 

西田  そうですね。僕たちは幼少の頃から当たり前のようにエギでイカを釣って遊んでましたから。
その頃は現在のエギングとは程遠く専用ロッドもPEラインも無い時代でしたけどね。

当時はシャクると言うより漁師さんの「イカ曳き」を見て自分たちで学んで色々と試してましたね。
それこそ水中に潜って友人にエギをしゃくってもらってアクションを見てみたり(笑)

 
 
 

冨永 水中に潜ってアクション見るのは、本気の人アルアルですよ(笑)

 

西田 そうなんですよ。その頃は自分でエギのボディ削りも始めた頃で、かなり試行錯誤したんです。

 
 
ボディの試行錯誤の過程を教えて下さい。
 
 

西田 最初は「曳き型」と言われる形状を元に作っていました。
この「曳き型」と言うのは漁師さんが船でエギを引っ張って、時折しゃくって抱かせる釣法で、ダートと言うよりは跳ね上げメインのボディ形状でした。
縦移動がメインなので、腰のところから折れ曲がったような形状が特徴でした。

当時は、まだ布を巻いていなくて木に焼き目を付けて模様など入れてました。
いつからか布を巻き、2枚違う模様やカラーを重ねる事で、色々なカラーを作る事が出来たのですが、その頃から状況で釣れるカラーが違うと言う事も徐々に解ってきました。

 
 

西田 で、跳ね上げに徐々にダート性能が加わって行きエギングと言うカテゴリーが出来る前から、鹿児島の漁師の間では、ダート性能を考慮したボディへと進化していました。
その当時は「ダート」と言う言葉は使ってませんでしたけどね。

そしてエギングと言うカテゴリーが確立されて行くと共に、タックルの進化も急速でしたよね。
そんな中プロスペックに出会い、優れた性能・・跳ね上げとダート性能を兼ね備えたボディが欲しくなり試行錯誤した結果「西田エギ」のボディ形状に行きつきました。

ただ跳ね上げとダートのみではなく、曳き型特有の水中で引っ張った時のバランスと、飛距離に繋がる若干太めのボディで重量アップも考慮したボディです。
その「西田エギ」と「Sチューン」とボディ形状は、ほぼ変わりないので、同じ物だと思って下さい。

 
 
その「西田エギ」をもとに完成した「Sチューン」の特徴を教えて下さい。
 
 

西田 ボディは、やや大き目にした事で高自重です。これは飛距離の向上を狙いました。
それとテンションフォール時やステイ時の姿勢を重視しているので、安定感を保つ為にも、ややファットなボディが必要でした。

その重視した姿勢ですが、反りあがった腰部分をファットにして浮力を持たせた事で、やや前のめり気味な姿勢になってます。

これは漁師さんの烏賊曳きからヒントを得ているのですが、エギを引っ張った時に頭が上がらないように姿勢を保つ設計なんです。
そうする事で、潮が効いている時や潮流が有る時でも姿食わせの姿勢を保つ事で出来るんです。
腰からお尻が反りあがっている形状は、その為です。

 
 

西田 フォール速度は、プロスペックと比較して、ほんの少し早めです。
その差は「プロスペックが10秒かかるところを9秒掛かる」程度の差で、特に早いと言う訳では無いですし、「西田エギ」を作った当時では、普通のフォール速度でした。

今は、スローフォール系も増えたので、普通なのかは解りませんけど。

アクションは、ダートと跳ね上げの縦横アクションのミックスです。
そして連続ダート中に時折イレギュラーなパニックアクションも起こすように出来てます。

 
 

冨永 パニックアクションは、今までのエギには無いですよね!

 

西田 はい、無いと思いますし、なかなか意図して作るのは至難の業だと思います(笑)

それと見た目はファットですが、引きオモリは無くてシャクリも軽いんですよ。
この辺りは鉛の形状やボディ形状で調整しているんですがその内容は企業秘密です(笑)

 
 

冨永 さっき「状況で釣れるカラーが解ってきた」と言われていましたが、西田さんは本当にカラーに対する理論をお持ちですよね。
「Sチューン」にも様々なカラーがラインナップされていますが、カラーの使い分けなど色々とうかがいたいのですが・・

シチュエーションごとでカラーの使い分けは、エギングをされている方であれば凄く興味が有る事ですが、西田さんはどのように使い分けているんですか?

 

西田 自分は、全体のカラーと言うより下地のベースカラーのアピール力の違いで使い分けています。

アピールの強い順から言うと「シルバー」「マーブル」「ゴールド」「コパー」「レッド」の順番ですかね。

 
 
 

冨永 背中のカラーじゃ無いんですか?

 

西田 下地のベースのアピール具合を基本として、背中や全体の塗装カラーとの組み合わせて考えています。
いわゆる僕が口にする「パズルエギング」ってやつです。

 

冨永 なるほど!
下地のアピールと塗装の強調具合の組み合わせを、その時の状況に合わせて考えているわけですね。
めちゃめちゃ深いですね~

 
 

西田 そうですね。深いですけど、そのパズルが思った通りにハマった時は、凄く気持ち良いですよ。

 

冨永 じゃあそのパズルの組み合わせ方を教えて下さい(笑)

 

西田 なかなか言葉に出来る事じゃ無いんですけど下地の説明をすると・・

 
 

西田 シルバーベースは一番アピール力が強いと考えていて、フラッシング効果が一番得られます。
膨張色でも有るので濁りにも非常に強いカラーです。

 

西田 次にマーブルベースですが、マーブルはシルバーベースに色々なカラーが混ざっているので、フラッシング力も有りながら多色のアピールも有り、かなりアピール系のベースです。

西田 次にゴールドベースですが、シルバーよりややフラッシングが弱く、定番と言って良いと思います。

汎用性が高く迷ったらゴールドベースを投げると良いですよ。
初めての場所なんかは、自分も1投目にゴールドベースを使う事が多いです。

 

冨永 なるほど。店頭に並んでいるエギもゴールドが多いですが、納得できました。

西田 で次にコパーベースが、ゴールドよりもフラッシングが弱くなりますが、逆にシルエットが強調されるカラーです。
大きく分類するとコパー系は曇りにも強いです。

西田 最後にレッドベースが一番のローアピール下地になります。
シルエット強調系なので、夜の釣りや深場等で強いです。
既にユーザーの皆さんも夜に多用されてる方が多いと思いますが、本当に効果が有ると思います。

冨永 ベースだけでもこれだけ有るのに、更にボディカラーを加えてパズルを考えるんですね。考えれば考えるほど迷ってしまいそうです。

西田 まあ最初は、そう思うでしょうけど慣れていきますよ。
それと自分の記憶を辿って過去のヒットしたカラーとシチュエーションを思い起こせば、釣果に対して釣れた理由が見つかるので、そのパズルの記憶をどんどん積み重ねて行ってるカンジです。

例えばですが、レッドベースはシルエット強調で夜に強いと言いましたよね。
これが日中だとしても曇り、濁り、深場等の条件が重なれば「夜の釣り」に近くなるんです。
となると自然とカラーセレクトが見えてくるでしょ?
そうやってベースを決めながら、ボディカラーをローテーションしたりしています。

 

冨永 段々とベースによる使い分けが理解できて来た気がします。

 
では、リアルカラー・・・Sチューンに有る「トビウオ」カラーなんかは、イカにはどう見えているんでしょうか?
 
 

西田 イカにはリアルカラーだから魚に見えるって見え方は、していないと思うんですよね・・
人間が見る感覚とイカが見る感覚と言うか、イカがエギを見たときにエサかどうか判断する材料って全然違う思考だと思うので、Sチューンのトビウオは「シルバーベース」として見ています。

なのでさっきのベースのくくりで言うとハイアピールカラーになりますね(笑)

 

冨永 そうそう!薩摩系カラーで布の縞々が有るじゃないですか。
あれはどの中に入るんですか?

 
 

西田 布の縞々は、体色変化を狙ったカラーなので、少し違ったカラーとして考えています。

 

冨永 体色変化って、どう言う事ですか?

 

西田 このエギ(#14)を見てもらって良いですか?

 
 

西田 ボディを側面から見たら赤い縦線がいっぱい入ってるじゃないですか。
そのまま視線をエギのカンナ側へ動かしてエギ後方から見ると真っ赤に見えるでしょ?
それとエギのボディもストレートじゃないんで、赤い縦線が違った角度に見えてもきます。

これが体色変化なんですが、イカが寄ってきても中々抱ききれない時や接近戦の時に非常に効果が高いんです。

 

冨永 これ凄いですね!知らなかったです。

 
 

冨永 と言う事はプロスペックの超定番カラー「薩摩オレンジ」に有るラメの縦線も、これと同じって事ですか?

いや~凄い!釣れるカラーには、ちゃんと理由が有るんですね。
めちゃめちゃ納得できました。

 
 

冨永 早くエギング行きたくなってきました(笑)

いま聞いた内容も公開したく無いです(笑)

西田 残念ながら公開されるようですよ(笑)

冨永 でしょうね・・

インタビューア  いや~本当に濃い内容でした。これを見たユーザーさんは、今後のエギのカラー選定が楽しくなると思います。

西田 皆さんにもパズルエギングを楽しんでもらいたいです。

冨永 楽しめるでしょうね!

インタビューア  お二人とも、今日は有難うございました。

冨永 有難うございました!

西田 有難うございました!

対談/西田 哲郎×冨永氏